学びは社会が支える時代へ。

2026.03.16

「大学を『会社』から『社会』に戻す」
東京工業大学名誉教授 矢野眞和さん

東京工業大学名誉教授 矢野眞和さん

 「すべての人が学べる社会へ 高等教育費負担軽減プロジェクト」は、3月12日、「高等教育費負担軽減Webセミナー」を開催しました。第6回となる今回は、東京工業大学名誉教授の矢野眞和さんを講師に迎え、「大学を『会社』から『社会』に戻す」をテーマにお話しいただきました。
 講演の冒頭で矢野さんは、子どもの成長段階と家計の平均貯蓄率の関係を示すグラフを示しながら、子どもが大学生になる時期には多くの家庭で貯蓄率がマイナスとなっており、貯蓄を切り崩しながら大学に通わせている家庭が多いと指摘しました。こうした背景には、日本の高等教育に対する公財政支出が諸外国と比較して低い水準にあることなどがあると説明しました。
 一方で、大学卒業者は高校卒業者よりも生涯所得が高い傾向にあり、大卒者が増えることで国の税収が一人あたり約1000万円増えるとの試算も紹介しました。こうした点から、高等教育への教育投資は、社会全体にとって費用対効果の高い政策であると説明しました。
 さらに、日本には「18歳で大学に入学する」という「18歳主義」と、「大学は必ず卒業しなければならない」という「卒業主義」の考え方が根強くあるが、諸外国を見ても一般的な高等教育のあり方ではないことを示し、日本でも一度中退しても復学しやすい仕組みを整えるべきであると述べました。このことにより、日本に10%以上いるとされる高校・専門学校・大学の中退者の学歴を底上げできる可能性があると説明しました。
 最後に、企業の法人税の一部を教育投資や研究開発への公共投資として活用することで、大学を「会社のためのもの」から「社会全体のためのもの」へと位置づけ直すことが重要だと強調し、講演を締めくくりました。